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カメラ漫画夜話 第八話 キミイロフォーカス

  • 写真: キミイロフォーカス
(千明太郎 少年チャンピオンコミックス 1〜3巻発売中)

 以前にも書きましたが、私は小学生時代は少年ジャンプ誌上において一世を風靡していた「キン肉マン」「北斗の拳」「聖闘士星矢」は原作を読み、アニメも見ていたにせよそちらの世界に深くはまるということもなく、「どっきんロリポップ」、「胸キュン刑事」といった可愛い女の子がヒロインでパンツや裸もザラに出てくるような漫画を誰にも内緒でコソコソ読んでいるようなガキでした。今のように萌え系漫画にはまるのを予見させるが如く。
 その後「美少女戦士セーラームーン」を皮切りに可愛い女の子をヒロインとした漫画、アニメ、ゲームには次から次へと手を出し、とうとう「カメラの登場する漫画」というテーマの中でもそういった漫画を取り上げている次第です。
「僕の写真部に女の子がいたらいいなあ。そんなふうに思っていた時期が僕にもありました」
 と中高生時代を懐かしみつつ。

 この漫画を私はヲタ系情報を発信しているブログで知りました。それもアニメやゲームの女性キャラクターを立体化したフィギュアのある部分に殊更拘って商品紹介写真を撮っているサイトに掲載されたとあっては、漫画の内容はまあ推して知るべしでありましょう。直接的な展開こそないものの、ベクトルを間違えばコンビニの成年漫画誌くらいの漫画になりそうなやらしさはあります。作者は前作でも「プリプリ」という、「ラブひな」の舞台をミッションスクールに変えたらさもありなんというような学園ハーレムラブコメを描いておいででしたが(事実ノリも読者サアヰスの場面もそんな感じでした)。こちらも後で述べる通り女の子側の心理の揺れが(限られた枠内で)丁寧に描かれていた、のではないかという印象はあります。

 話をキミイロに戻して……主人公はカメラ(ニコンD40x+キットズーム)を買ったばかりの気の小さい眼鏡少年花園大路。大嶽菫という、ツンデレ幼なじみがオプションに付いてきてます。彼は戦場写真家の影響で報道写真を志して、片目の写真部部長の高嶺蘭先輩の色香に惑わされて写真部に入るところから始まります。で、この蘭先輩に大路は写真の才能を認められる訳ですが、この部長が写真についてどうしてしっかりした哲学をお持ちで、

「楽しむことは大事よ。とくに最初は」
「でもね、それだけじゃ上達しない。大きなものを手にしたいなら器も広げないとダメ。大きいほど早く」
「そして今は選ぶ時じゃない。今は求める時」

 その言葉に背中を押された大路は勇を鼓して菫をモデルに水着ポートレートを撮らせてもらう訳ですが、撮っていく内にファインダー越しに菫を見る大路の目がだんだんいつもと違ってきて……

「えっ…えっ…ええッ!!?」

 菫の目の前にいたのは村瀬修功氏(ガンダムWキャラクターデザインで有名な方)の描くイケメンもかくありなんというような美少年。ドキドキしっぱなしで滝の中でトランス状態になっていた菫を撮った一枚は見事新聞社主催の高校生写真コンクール金賞の栄誉を得たのでした。
 注目を浴びたけれどこれでいいのかと悩む大路。そんな彼の背中を蘭先輩はもう一度押します。

「作品に誇りを持てない人なんて、私は嫌いです」
「今は些細なことで貴方の才能という絞りを閉じてはダメ」
「解放して! 白トビするくらい。感性という七色の光を取り込むの」

 これには私も痺れました。才能はともかく、少しは被写体を見る目はあると自負していながらなかなか前向きになれない身ですから尚更、ねw。大路も大路でこれでまた積極的に行動を開始して、菫を撮り、それがキッカケで中等部の後輩の春咲蕾を撮ることになる訳ですが……これ以上のネタバレは控えます。ツン的態度を取りながらも千々に乱れる菫の乙女心や、大路の素敵なモデルたらんと奮闘する蕾の心理、そこら辺りが丁寧に描かれてると思いました。主に女の子側のモノローグという体裁で(プリプリの場合は酒飲んで本音をぶちまける、二人きりの場面で率直に話すって形もありましたが……それも今後増えていくでしょう)。
 私自身が男な分、女の子の微妙な心理は100%理解しきれない部分はあるでしょうけど、親しい女の子と話していて感じる、場面場面での女の心理は漫画で描かれてることとほぼ同じだなって思いますし、読みながら
「あー、こう思ったことって私もあるわ」
 と女性の共感も得られるんじゃないかとは思いますけども。

 そんなこんなで学園ラブコメやギャルゲにおける定番のイベントも開催され、それが一段落した後の新展開では新キャラで藪中忍という報道部員が登場し、キヤノンEOS 30Dに小さい脚の付いたバズーカ超望遠(一番長い800mmF5.6よりまだ長い!)を付けたのを駆使して校内のスキャンダルを撮ってました。妹分として重音テトのようなカールしたツインテールが特徴のダリアという後輩も出てます。
 この忍、どうやら過去に蘭と何かあったらしく復讐劇を企んでいるらしいから気をつけてと顧問の柊先生(保健医)が蘭に忠告し、そこで大路が収拾を付けようと立ち上がるのですが……? 事が収まった後での蘭と大路の仲が楽しみではあります。

 私はこういう路線は好きなのであっさり定期購読リストに入りました。まして蘭先輩というお気に入りもいましたもん(こういう時俗に「俺の嫁」と言いますわね昨今)。蘭と大路の仲が接近しつつある一方で、菫はどうなるかも気になるところではありますが。

次回予告:銀塩少年(後藤隼平 少年サンデーコミックス)
2009年11月7日 こーちゃん (4)
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