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カメラ漫画夜話 第十一話 まなびや

(小島あきら スクウェアエニックス ガンガンコミックスJOKER)

 「瞳のフォトグラフ」の項で撮る理由が一体何なのかとヒロインが悩む件がある事に触れました。あれを読んでいて、私もまた彼女と同じように
「俺も写真やって長いけど、何のために撮ってるんだろうな」
 と暫し悩む日が続いたのを覚えてます。
 最初にカメラ(という名の金属の玩具)ありきで面白がって下手な写真を粗製濫造すること数十年。今でこそプロの方に社交辞令抜きでお褒めをいただける程のレベルにはなりましたが、それにしたってある時期を境にヘボ釣り師の竿自慢でいいのか。もう少しでもマシな写真撮れるようになった方が良かないかと写真を見直し、反省するようになってからでそれ以後も明確なテーマを深く考えたことなどありません。それこそレントゲンと眼底写真以外は何でも撮るって感じで。
 それでもただ金属の塊を振り回していちびっている内に
「余は何をいかに撮るべきか」
 という問いに対する漠然とした答えは見つかって、それが丁度今回紹介する「まなびや」の主人公のそれに近いのではないかと思いました。それが何かは作品紹介と併せて追ってお話します。久しぶりの莫迦々々しいエッセイではございますが、暫しのお付き合いの程よろしくお願いします。

 作者の小島あきら氏は「まほらば」という「めぞん一刻」と「クルクルくりん」を足したようなほのぼのコメディで有名な方で、次回作の「わ!」でも同様の雰囲気の四コマを展開なさってます。それと前後してこの「まなびや」は「わ!」と同じ高校を舞台に(現に生徒会長の岩千鳥帝と顧問の千両千尋先生が両作に跨って登場してます)展開されるストーリー漫画としてガンガンJOKER誌上で連載が始まったのですが、作者の体調不良により5話掲載後は休載で現在のところ再開の見込みはありません。今回もこれまでの作品と同じく個性豊かな面々が繰り広げるドラマに期待が持てそうな導入だったので再開を望まずにはいられないのですが。

 主人公はこの春に高校生になった槙島武(まきしまたける)。中学卒業直後に男手一つで自分を育てていた父親が再婚して、それを機に充実した高校生活を始めようかと思った矢先に桜並木の中でライカM3(二回巻き上げの方)を手に佇む金髪碧眼の少女、ユーフォビア・マルギナタ・白雪と知り合って、更に「まほらば」の関係者らしいロングヘア少女芝瑠璃も交えて「映像写真部」と呼ばれるクラブに入部するというのが大筋です。その間に人嫌いの白雪と武の確執、見た目も性格も子供じみた部長の竜胆花輪(りんどうかりん)、クールビューティで話し方の男っぽい副部長の擬宝珠(ぎぼうし)夢、眼鏡っ娘でおっとりした蘇芳縁(ずおうゆかり)、KYで部長と対立している竜田薊(たつたあざみ)、アニオタの苧環(おだまき)三郎太、ぶっきらぼうでカメラの造詣が深い金雀児(えにしだ)譲といった面々との交流が描かれて、さてこれから部活が始まるというところであったにもかかわらず(以下略)。まあ我々にはただ再開を祈るしかできませんが。ちなみに苦艾(にがよもぎ)という幽霊部員もいて、それらしい男子が最後に後姿で登場してます。

 部室にはパソコンとプリンターがあって、現状フィルムカメラを持っているのは白雪しかいませんがフィルムカメラお断りという訳ではないようです。各キャラの使用カメラは以下の通り。

・武  :携帯のカメラ
・白雪 :ライカM3二回巻き上げ
・瑠璃 :キヤノンEOS KissX2
・花輪 :オリンパスE-4××(410か420かは不明)
・夢  :キヤノンEOS 40D、IXYデジタル510
・縁  :リコーR10
・薊  :パナソニックルミックスGH1
・譲  :ソニーα300、サイバーショットDSC-G3
・三郎太:ペンタックス
・苦艾 :?

 武はこれからちゃんとしたカメラを持とうという段階で携帯しか持っていないし、白雪のM3には曰くがある、夢はキヤノンの伝統を買っていて、縁はリコーのコンデジのデザインが好き、譲はメモステの利便性重視とそれぞれにちゃんとなぜそれを持っているのかという理由も作中で説明されてます。この辺りも上手くドラマ化できそうではありますね(一応岩千鳥の依頼で先輩が他のクラブの写真を撮りに行くという一幕もありましたが)。
 そもそも武ももっともらしい趣味として
「『いいな』と思った物を写メで撮る」
 というのがあって、それが武にとっても、白雪にとっても充実した青春の糧になる、そう願って止まないところです。同じように自分で「いいな」と思ったらシャッターを切って、アルバムに収めていっている一人として。
2010年2月10日 22:00 こーちゃん (4)
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